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コラム

会社法の一部を改正する法律

2021年04月

弁護士: 徳山 慶太

分 野: 内部統制・企業統治

1 はじめに

 令和3年(2021年)3月1日、会社法の一部を改正する法律(以下「改正法」といいます。)が施行されました。改正法による変更は多岐に亘っていますが、本稿では、取締役の報酬に関する規律の概要について、ご紹介します。

2 取締役の個人別の報酬等の決定方針を策定することの義務化

 改正前会社法下においては、実務上、株主総会にて取締役全員の報酬総額の最高限度のみを定め、個人別の報酬額の決定は、その枠内で取締役会に一任するという取扱いがされていました。判例は、このような取扱いも、総額に上限がある以上、いわゆるお手盛りの弊害を防止できるため適法としていました(最判昭和60年3月26日判時1159号150頁)。しかし、このような取扱いは、個人別の報酬の決定プロセスが不透明なことは否めないことから、決定プロセスを明らかにし、株主の監督対象とする必要がある旨が指摘されていました。

 

 そこで、改正法は、監査役会設置会社(公開会社かつ大会社に限る)であって金融商品取引法24条1項の規定により有価証券報告書提出義務を負う会社(いわゆる上場会社)と監査等委員会設置会社の取締役会において報酬内容の決定方針を定め(個人別の報酬等の内容を定款又は株主総会の決議により具体的に定めている場合を除く。)、これを開示するものとしました(改正法361条7項)。

3 非金銭的報酬(株式・新株予約権)の株主総会決議事項の明確化

 改正前会社法では、取締役に対して非金銭的報酬を与えるについては、株主総会において、単に「具体的な内容」を定めるべき旨が規定されているのみでした(改正前会社法361条1項3号)。

 

 これに対し改正法は、細かく報酬区分ごとに決議事項を定めるものとしました。具体的には、取締役の報酬等として当該株式会社の株式・新株予約権を付与する際には、株式・新株予約権の上限その他法務省令で定める事項について、定款又は株主総会決議で定める必要があります(改正法361条1項3号、4号)。この規制の潜脱を防止するため、株式・新株予約権の払込みに充てるための金銭を報酬として支給する場合にも、同様の規制が設けられています(同項5号)。

4 上場会社等における株式報酬・新株予約権の払込み不要化

 改正前会社法においては、無償での新株発行ができないことなどから、取締役に報酬として株式を発行する場合、時価で株式を発行しつつ、他方で当該払込金相当額を現金報酬として付与し、これと相殺する方法や、新株予約権を発行する場合には、行使価額を1円とする迂遠な方法が採られていました。

 

 そこで、改正法は、上場会社が取締役の報酬等として株式報酬・新株予約権を付与する場合には、金銭の払込み等を要しないものとしました(改正法202条の2、236条3項)。

5 おわりに

 以上でご紹介した他にも、改正法では多くの変更がなされており、会社として適切な対応が求められます。

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