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コラム
条文の読み方
2018年10月
弁護士: 林 祐樹
分 野:
日常用語では同じような意味を持つ言葉でも、法令の条文では厳密に使い分けられています。なお、契約書では厳密に使い分けられている場合と、そうでない場合があることにも留意が必要です。
1 「及び」と「並びに」
日常用語では、「及び」も「並びに」も、ある事柄を並列的に接続する場合に使われますが(英語でいうand)、法令では、「及び」は同じレベルの事柄を接続するときに使われ、「並びに」は「及び」で接続されたグループと別の事柄を接続するときに使われます。
例えば、「羊かん及びどら焼き並びにプリン及びケーキ」という文章では、和菓子である羊かんとどら焼き、洋菓子であるプリンとケーキが「及び」で接続され、和菓子グループと洋菓子グループが「並びに」で接続されています。
なお、同じレベルの言葉を3つ以上続ける場合は、「A、B及びC」となります。例えば、「羊かん、どら焼き及びおはぎ並びにプリン、ケーキ及びタルト」となります。
2 「又は」と「若しくは」
日常用語では、「又は」も「若しくは」も、選択的な事柄を並べる場合に使われますが(英語でいうor)、法令では、「羊かん、どら焼き又はおはぎ」というようにまず「又は」が使われ、それより小さなレベルの選択的な事柄が出てきた場合に「若しくは」が使われます。上の例では、「羊かん若しくはどら焼き又はプリン若しくはケーキ」、「羊かん、どら焼き若しくはおはぎ又はプリン、ケーキ若しくはタルト」となります。
3 「その他」と「その他の」
法令では、「その他」は前後の事柄が並列関係にある場合に使われ、「その他の」は前の事柄が後ろの事柄の例示である場合に使われます。
例えば、憲法21条1項の「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」では、集会の自由と結社の自由と言論の自由と出版の自由とその他一切の表現の自由が並列関係にあり、憲法9条2項の「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」では、陸海空軍が戦力の例示とされます。