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コラム
労働者代表の選出について
2017年05月
弁護士: 元氏 成保
分 野:
1 労働者代表選出の必要性
労働基準法は、一定の場合において、その事業所に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、それがない場合は労働者の過半数を代表する者との間で労使協定を締結することを求めています。また、就業規則を作成・変更するに当たっても、過半数労働組合や労働者代表の意見を聴かなければならないこととされています。
したがって、過半数労働組合が存在しない場合に、労働者代表を選出する必要が生じることは少なくありません。以下、労働者代表の選出にあたっての注意点について簡単に説明します。
2 労働者代表が代表する労働者の範囲
選定された労働者代表が代表する労働者は、出向者、嘱託、パート、アルバイト、休職者、管理監督者を含むと解されており、当該労使協定の対象となる労働者に限られません(但し、派遣労働者は含まれません)。したがって、事業所単位で、これらの者も含む労働者を分母として、その過半数の代表を選定しなければなりません。
3 労働者代表の選出方法
労働者代表は、管理監督者でない者であり(管理監督者は労働者代表にはなれませんが、労働者代表は管理監督者をも代表することになります)、また、法に規定する協定等をする者を選出する事を明らかにして実施される投票、挙手等の方法により選出された者でなければなりません(労働基準法施行規則6条の2)。
そして、その選出については、
① その者が労働者の過半数を代表して労使協定を締結することの適否について判断する機会が、当該事業場の労働者に与えられている(使用者の指名などその意向に沿って選出するようなものではない)こと
② 当該事業場の過半数の労働者がその候補者を支持していると認められる民主的な手続がとられている(労働者の投票、挙手等の方法により選出される)こと
の二つの要件を満たす必要があります(昭和63.1.1基発第1号)。
したがって、労働者代表を使用者が一方的に指名している場合、労働者の親睦会の代表者が自動的に労働者代表となることとされている場合、一定の役職者が自動的に労働者代表となることとされている場合、一定の範囲の役職者が互選により労働者代表を選出している場合などは、適切に労働者代表を選出したとは評価されません。一方、必ずしも労働者全員が一堂に会する必要はなく、上記の要件を満たす限りにおいては、持ち回り決議やEメールにより労働者代表を選出することも、認められます。
また、労働者代表は、原則として、協定等ごとにその都度選出しなければなりません。但し、法令上の明文で認められているわけではありませんが、労働者代表の選任についての規程等を定め、従業員らの同意を得たうえで選任したのであれば、いわゆる任期制を採用としても差し支えないと考えられています。
4 まとめ
労働条件を巡る紛争において、紛争解決の前提として労働条件を確定しようとしたところ、会社側が当然の前提としていた労使協定について、適切に労働者代表が選任されていないのではないかという点が問題視されて、その有効性が争われるケースが少なからずあります。労働者代表の選任は、場合によっては形式的なやり取りとなることも多く、軽視されがちではありますが、後日の紛争の防止のため、上記の点に留意し、適切な段取りを整えておく必要があります。