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コラム

シェアリングエコノミー

2022年11月

弁護士: 西 祐亮

分 野: 景品表示法、消費者法

1 シェアリングエコノミーとは

 近年、遊休資産の有効活用を進めるために、シェアリングエコノミーが推奨されています。シェアリングエコノミーとは、自らが保有する活用可能な資産等を、インターネット上のデジタルプラットフォーム(以下「DPF」といいます。)を介して他人に提供(共有)する経済活動のことをいいます。

 この場合、資産等の提供者と利用者及びDPF事業者の三者が取引に関与することとなります。しかし、DPF事業者は、取引の直接の当事者とはならず、あくまで提供者と利用者どうしをつなぐDPFを提供する事業者に過ぎないとされています。そのため、提供者と利用者との間での取引においてトラブルが生じたときに、DPF事業者は当該トラブルに関与することを拒絶し、被害者が相手の情報を把握できない場合等において、被害者を保護する体制が不十分であるという問題があります。

2 取引DPF法

 上述の問題を受け、「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律」(以下「取引DPF法」といいます。)が制定されました。取引DPF法では、①消費者保護のための施策を講じる努力義務(3条)、②重要事項(商品の安全性の判断に資する事項等)の表示に著しい虚偽・誤認表示がある商品の出品の停止要請(4条)、③被害を受けた消費者による販売業者の情報の開示請求権(5条)等が定められました。

 しかし、取引DPF法の適用を受けるDPF事業者はごくわずかであり、それ以外のDPFを利用し、被害を受けた消費者の保護はいまだ不十分な状況にあります。

3 DPF事業者の責任

 もっとも、取引DPF法の適用が無い事業者であっても、取引トラブルに対して一切の責任を負わなくてよい訳ではありません。DPF事業者には、利用者が自身のDPFを利用している以上、利用者に対して、欠陥のないシステムを構築してサービスを提供すべき信義則上の義務を負います。

 また、DPF事業者は、DPFを開設するに際しては、業法規制の適用の有無を確認することが重要です。DPF事業者自体には業法規制の適用がない場合であっても、資産等の提供者(利用者)が何らかの許認可等を取得する必要がある場合も考えられます。その場合には、DPF事業者がそれらの者に対して、許認可等の取得の有無を確認する体制を構築することが必要となります。

 DPF事業者は、自社のDPFの安全性・信頼性が高まることで、利用者を増やし、より多くの利益を得られることとなります。そのため、DPF事業者は、積極的にトラブルの予防活動を行う必要があります。

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