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コラム

子会社管理制度の構築について

2023年10月

弁護士: 稲田 正毅

分 野: 内部統制・企業統治

 子会社管理(統制)をするについては、いろいろなバリエーションがあり、それぞれの企業グループでの特性を勘案して、最適と思われる体制を構築する必要がある。その制度構築にあたっての、主要なポイントを紹介する。

第1 原則論

 子会社といえでも別法人であるから、子会社の経営事項は、会社法や定款に基づく運営がされるのが原則である。

 他方、親会社は株主総会を通じて、株主総会決議事項とされるものについてはその意思決定をコントロールしうるし、株主としての監督権もある。さらには、これ以外にも、株式の過半数を支配するグループ会社であるがゆえに親会社の管理・統制が必要であるという観点から、子会社の経営にかかる事項について、その権限や責任について、親会社へ一定の移譲が行われることが多い。

第2 人的統制

子会社役員(代表者を含め)については、役員選任権を有する株主総会決議を通じて、親会社が人選しており、子会社役員を通じた子会社経営のコントロールが行われる。

 そのため、実質的に親会社の意向等に反した決議等が行われることは低くなるものの、それ以外に、制度的保障として、権限規程、子会社管理規定、経営管理契約等によって、親会社による経営関与が行われることか多い。

第3 管理の手法

1 管理方針

 どの程度の権限を親会社へ移譲するかについては、子会社における経営判断の機動性、自主性を重視するか、あるいはグループ全体の管理統制、リスク管理を重視するかというグループ経営の方針により決められることとなる。子会社の管理の程度を強めるほど、機動性は失われ分社化している意義が失われるとともに、子会社役員等のモチベーションの低下、責任感の低下が生じる可能性があることに留意する必要がある。

2 権限委譲する場合の注意点

 親会社が子会社株式の100%を保有する完全子会社であれば、子会社の利益と親会社の利益は合致するものの、他の株主が存在する場合には、その少数株主の利益保護を考慮する必要があり、少数株主の利益を害し親会社利益のみを図るような決議がされることは許されない点に注意する必要がある。

3 管理手法

 一般に、子会社管理のパターンとしては、集積方式(親会社集中管理体制:親会社の統制管理をできる限り行う方式)、分権方式(分権的管理体制:グループ会社全体に関わる経営事項の権限を委譲する方式)があり、各企業の特性に応じてその統制の程度(企業特性に応じて、両者の折衷的方式となろう)を決めることとなる。

4 管理の程度

 先に述べた通り、子会社の経営事項は子会社にける会社法あるいは社内ルール(手続)において行われるものであるが、一定事項については、親会社による経営関与がルール化されることとなる。その関与の程度には以下のようなものがある。

① 親会社の承認が必要な事項(親会社における権限規程に基づき、その決裁権限(部門長、社長、取締役会など)を異にすることは当然に可能である。以下同様。)

② 親会社への報告が必要な事項

③ 親会社への協議、助言が必要な事項

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