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コラム

スタートアップ企業への投資と留意点

2023年05月

弁護士: 小澤 拓

分 野: ベンチャー法務、IPO

第1 スタートアップ企業への投資の増加

 令和4年(2022年)、政府が「スタートアップ育成5か年計画」を公表しました。その中で、スタートアップへの投資額につき、当該公表時点で8000億円規模と試算されていますが、これを令和9年度(2027年度)に10兆円規模とすることが目標として掲げられています。

 このような政策も後押しし、近時、スタートアップ企業への投資が飛躍的に増大していることを実感します。その中で、投資を業としない事業会社が、自らの資産の運用として行う投資も非常に増えています。しかしながら、一口に投資といってもその方法や法的性質は様々であり、時には詳細な契約書を取り交わしたり、複雑な手続を経たりする必要があります。

 そこで本稿では、スタートアップ企業への投資方法として採用されることが多い類型とそれぞれの留意点について、解説いたします。

 なお、本稿の対象は、金銭の払込みをして対象企業の株式を引き受けることとします。また、投資対象企業は発行済み株式の全てについて譲渡制限を付している、いわゆる非公開会社であることを前提とします。

第2 投資方法の類型と法的観点からの留意点

1 直接の投資

 投資家と対象企業が直接に交渉し、投資をする方法です。

 法的には、投資家と対象企業の間で投資契約を締結したうえで、対象企業から新株発行を受けること等により株主となります。上場株式と異なり、引き受けた株式を手軽に売却できるとは限らないため、投資契約の中に、投資資金をできる限り回収するための定めを設ける必要があるでしょう。

 

2 ベンチャー・キャピタル(以下「VC」といいます。)を通じての投資

 スタートアップ企業への投資を業とする組織がVCであり、よく用いられるスキームとして、VCが中心となってスタートアップ企業への投資を目的とする投資事業有限責任組合(以下「LPS」といいます。)が組成されます。当該LPSに出資がなされたうえで、当該LPSを通じてスタートアップ企業への投資を行い、組合契約で定めた目的を達成して利益が出た場合に、当該利益が出資者に分配されます。

 特徴として、民法上の組合であれば出資者(組合員)は無限責任を負い、出資額以上のリスクを引き受けることになりますが、LPSの場合、出資額以上の責任を負わないという、有限責任組合員の存在が認められています。これにより、有限責任組合員である出資者側から見れば、自らの資金を組合に投下して、専門知識を持つVCに投資先選定等を委ねることで、回収可能性を高めることが期待されます。

 LPSへの出資の契約書(「LP契約書」と呼ばれます)は、非常に長大かつ複雑な内容となっていることが多いため、思わぬ条項が設けられていないか、注意して読み解く必要があります。

 

3 独自にファンドを立ち上げて行う投資

 事業会社が自らファンドを立ち上げることもあります。一般に、「CVC」と呼ばれます。基本的なスキームはVCが組成するLPSと同様のことが多いように見受けられますが、事業会社は投資について専門知識を有していないことが多いため、出資者から募った資金を適正に運用するという責任を果たすために工夫が必要です。

第3 まとめ

 近年、ともすれば「流行」とも言えるスタータップ企業への投資ですが、法的には複雑な論点や手続を複数含むため、投資規模が大きくなるような場合には、専門家によるサポートを検討した方が良いでしょう。

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