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イノベーションボックス税制

2024年07月

 最近、所得税・住民税の時限的な定額減税の話題が世間を賑わせたが、令和6年度税制改正に関しては、そのような個人向けの措置のみではなく、法人・企業に関連してもいくつかの重要な改正がなされており、例えば、租税特別措置法の改正により導入された、無形資産から生じた所得に対して税負担軽減の効果を与える研究促進税制であるイノベーションボックス税制は、日本の研究拠点としての立地競争力を強化し、民間による無形資産投資を後押しする効果を生み出すものとして期待されている。

 この制度は、具体的には、青色申告書を提出する法人が、令和7年4月1日から令和14年3月31日までの間に開始する各事業年度において後述の一定の特許権譲渡等取引を行った場合には、その取引に係る所得金額を基礎として計算した金額の30%に相当する金額の損金算入を認めるというものである。この制度の特徴は、従前の研究開発税制が、一般試験研究費の額に係る税額控除制度のように、企業の研究開発を後押しするものとして定められていたのに対し、企業による特許権等の譲渡や貸付け(いわばアウトプット)に着目して構築されているという点にある。

 対象となる特許権等とは、令和6年4月1日以後に取得または製作をした特許権及び人工知能関連技術を活用したプログラムの著作物のうち一定のものであり、それを居住者(国内に住所を有し、または引き続き1年以上居所を有する個人)若しくは内国法人に対して譲渡し、あるいは他の者(非居住者や外国法人を含む)に対して貸付けた場合にこの制度が適用される。国外への譲渡は制度の対象外とされており、無形資産の海外への流出を防止する効果も期待されている。

 当初は、無形資産を組み込んだ製品の販売に対しても一定の所得控除をすることが検討されていたが、製品における特許権等の寄与部分の切り分け(特定)が困難であること等を踏まえ、今回は見送られている。今後の制度の整備・拡充等が期待されているところである。

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